音の文学館問題

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最近、ちょっと話題の音の文学館問題。

著作財産権の問題ではなくて、著作隣接権の問題なんですが、コメント欄でも混同してる人ばかりですね。



本事案の場合、著作物は「セロ弾きのゴーシュ」です。これは、ずいぶん昔の作品ですので、著作財産権は期限が切れています。

本事案では、実演をしている人がいます。声優の沢城さんです。沢城さんには、著作隣接権である、「実演家の権利」が存在します。これには、実演について、録音したり、送信可能化したりする権利が含まれています。

また、本事案では、実演をCDに固定している人がいます。音の文学館の方です。この方には、著作隣接権である、「レコード製作者の権利」が存在します。これには、CDの内容を、複製したり、送信可能化したりする権利が含まれています。

では、音の文学館の方は、どの権利に基づいてニコニコ動画に差し止めを申し立てればよいのでしょうか?


正解は、「レコード製作者の送信可能化権」(法96条の2)です。

もしくは、実演家から買切の契約をしたとブログのコメントで表現されているので、実演家の権利は、この方に譲渡されていると考えられるので、その場合は「実演家の送信可能化権」(法92条の2)で行うことも可能です。

決して、著作財産権に基づく差し止めではありません。

そもそも、なんで、著作隣接権なるものが財産権と独立に存在するのかというと、国会中継のようなそれ自身に著作物性がない客体であっても、放送したり、レコードに固定したりする者は、一定の投資を行っているのであって、その行為は準創作的価値が見出されるものであるから、保護されるべきものです。そこで、実演家等保護条約が各国間で結ばれ、我が国では著作隣接権として著作権法に組み込まれたものです。


このあたりは、弁理士試験でも意味不明になりやすいところなので、難しいけど、ちゃんと理解できるとすっきりしますね(^^)


ちなみに、この方はニコニコ動画に権利者ではないと一蹴されたようですが、それがなぜかは謎です。ひょっとして、著作財産権に基づく主張(法23条)をされたのでしたら、このニコニコ動画側の回答は正しいものだと思います。